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津原泰水『11 eleven』

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タイトル通り、11編の作品が収められた短編集。
ジャンル的にはSFから不条理、ホラーっぽいものまで
様々だけど、どれも始まりはさらりと引き込んでおいて
じわじわ絡みつき、気づけば物語の底へ沈めていく。

大戦中を舞台にした「五色の舟」では、フリークスの
疑似家族と、未来を予言する妖怪“くだん”との
邂逅が描かれる。他者視点だと一見悲惨にも見える
家族の環境だが、主人公たちにとってはかけがえのない
愛おしいまでのつながりであり、そんな彼らの生活が
戦争中の貧しくくすんだ世界の中で、静かに鈍く
きらめく美しさを湛えているように描写される。だが
くだんの登場によって状況は一変。新型爆弾の投下と
日本の敗北を予言するくだんから指し示された家族の
運命、世界の行く末は…。多元世界をテーマにした
壮大な話のようでいて、ここにあるのはひたすら
家族を想い合う心、不器用なまでの愛情だった。
不可思議で不安で切ない郷愁が胸をきゅうっと掴む。

SF系ではもう一編「テルミン嬢」が収録。神経症の
治療手段として発明された、とある音楽治療機器を
媒体に、書店での些細な話が最終的には火星にまで広がる。
人の愛から大いなる愛、そして惑星間の引力までもが
一人の情が濃い女性によって可聴化されてゆく。読後
なんとなく、五十嵐大介さんの画が浮かんだ。

あとはものすごく大雑把に分けると、背筋ゾクッと系と
ささやかな日常系。前者は「延長コード」、「追ってくる少年」
「微笑面・改」、「手」。後者は「琥珀みがき」、「キリノ」
「クラーケン」、「YYとその身幹」、「土の枕」。この中で
特に好きだったのは、家出して以来何年も会ってなかった
娘が亡くなったことを機に、娘の痕跡を探ろうとする父が
娘の残した延長コードをつないでゆくことで、彼女が軽々と
渡った此岸と彼岸を目の当たりにする「延長コード」。
背が高くて孤高でマイペース、子供っぽさも年寄りくささも
あわせ持つ同級生の少女に軽口を叩く感じなのに、どこか
憎めない愛嬌を含む少年の語り口でスピーディに進行する
「キリノ」の2編かな。ああ、でも「キリノ」より何気ない
「琥珀みがき」とか、冷淡なようで屈折した愛情にも思える
「YYとその身幹」とかも好きだ。ざっと一読した時は
それほどでもなかったのに、読んでから日が経つにつれ
少しずつ身体に、心に沁みこんでくる。そんな作品集です。

■津原泰水『11 eleven』 河出書房新社

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