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kuro score >>> cross core !!!

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トロイメライ・シリーズ以外にも、いつの間にか
池上さんの新刊が出てたのに今頃気づく。しかも
内容は、八重山諸島を舞台に八つの島ごとの物語を
八編紡ぎ出すという、個人的にかなり好みの方向性。
あまり暴走しすぎず、どこか優しい目線が感じられる
テイストは『夏化粧』に近いかも。舞台となる八重山は
石垣島竹富島波照間島しか行ったことないけど
どのストーリーも、島の自然や空気、匂いまでが
目の前に浮かんでくるような彩りある筆致。読んでる
最中は、沖縄まで行かなくてもこの一冊で行った気分に
なれるが、読後は結局沖縄に行きたくなる罪作りな作品。
★竹富島(タキドゥン)
種子取祭を控えた島で、神様から無茶な願いを受け
島中が振り回される話。祭の奉納舞踊が主題となるが
あらためて、あの小さな島にいろんな謡と踊りがぎっしり
詰まってるんだなあと実感。そしてそのベースに色恋沙汰が
不可欠の要素であることもまた思い知らされる。

★波照間島(パティローマ)
池上作品に定番の鬱屈した少女と、パイパティローマを
めぐる話。ふとしたきっかけで波照間のはるか南(パイ)に
あるという楽園を目指すことになるが、それより何より
主人公の屁理屈っぷりには苦笑とともに共感を覚えてしまう。
携帯の基地局を爆破してやろうかの件は思わず噴き出した。

★小浜島(クモー)
島に嫁ぎ4人の子どもを育てるも、特に苦労を感じず
暮らしてきた一人の女性が、火ヌ神の導きにより洗骨を
執り行うことに。家族の成長と大きなつながりを感じさせる
しみじみとしたいい話。主人公の女性が穏やかかつ朗らかで
集まってくる人もいい人ばかりで、読後感の爽やかさが断トツ。
「お母さん、私はそんなに苦労はしませんでしたよ?」
「洗濯物が幸せだったなんて今知ったわ」

★新城島(パナリ)
他が現代の話なのに対して唯一、琉球王国時代が舞台。
ザン(ジュゴン)を獲れば重税から免れるが、女性の姿をした
ザンに心奪われてしまった海人が主人公。明和の大津波を
予言したザンの伝説が下地になってる模様。ただメインは
津波でなく、女性のいじらしさと嫉妬の怖さが鮮明に描かれる。

★西表島(イリウムティ)
アマゾネスというか、ヤノマミ族を彷彿させる未開部族
ファンタジーかと思いきや、まさかのマッドサイエンティスト
もの。『夏化粧』や『風車祭』の中に突然『レキオス』を
ぶち込んだような違和感。ものの見事にバッドエンドですが
こういう苦いアクセントも暑い沖縄には必要なのかも。

★黒島(フスマ)
牧歌的な島の学校に、バリバリのエリート教師が赴任。
あまりにゆるい教育環境にキレそうになるが、ある時
島の特殊事情に触れてしまう。他の話に比べると、やや
頭でっかちというか設定優先で書かれた感があるが、それも
主人公の教師に合わせたものと捉えれば、なんとなく納得。

★与那国島(ドゥナン)
船を過剰に愛する少女と、かつて女海賊として名を馳せた
祖母の物語。祖母のモデルは、池上さんも以前に書評してた
『ナツコ 沖縄密貿易の女王』の夏子さんだろう。戦後実際に
密貿易で栄えた与那国島の様子が、ここにいきいきと蘇る。
正直、このストーリーはいつか長編でがっつり書いてほしい。

★石垣島(イシャナギゥ)
海上で星のように浮かぶ八重山諸島をつなぐ、群星御嶽の
物語。御嶽のツカサ(神女)として仕えるも自信の持てない
女性が、離島ターミナルで島のコンシェルジュとして働き出す。
そこで出会うのは、これまでの話にも出てきた人々。彼らを
さりげなく支え、安寧を祈ることで、自然に人を村を島を
つないでいくことに。石垣島こそ八重山の母であり、八つの
島を結ぶ島である。そして、八つの島は一つにまとまることで
輝きをいや増す。それこそが、まさしく「統ばる島」。

■池上永一『統ばる島』 ポプラ社












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