kuro score >>> cross core !!!

貴志祐介『新世界より』

fromnw.jpg

昨年中に読むとか言っておきながら、結局、年末ギリギリに
手をつけてみたら、途中から予想以上におもしろくなって
一気読み。こんなことなら、もっと早く読み始めたらよかった。
あ、ちなみに舞城新刊は、今年中に読むと思うよ(適当)。

舞台は、人間が「呪力」と呼ばれる力を手にした千年後の世界。
七つの郷で構成される小さな町「神栖66町」で生まれた一人の
少女が主人公。彼女の成長に伴って経験する呪力の発現、
学校における呪力の練磨、そして、その力の管理と歴史…。
様々なことが明らかになるにつれ、この世界の暗部も暴かれてゆく。
この呪力を使える人間と対照的な存在として、人語を解し、
人間に隷属・使役するバケネズミが挙げられる。当初、物語の
添え物程度に現れる彼らの存在が、後々奔流となって世界を
かき回すことになる。すべての霧が晴れた時、見えたのは
地平線の先まで広がる未来か、崖っぷちに立つ現実か。

正直、上巻の中盤まではこの世界観に入り込めなくて、だらだら
読んでたんだけど、後半“彼”が業魔化するあたりから一気に
引き込まれて、気づけば最後まで。しかし、よー考えてあるね。
教育と情報管理に比重を置くという、一見何気ない設定が
この不安定な世界を支える柱であり、傾きを正す天秤でもある。
そして、その世界の根幹をなす「呪力」の発生と進化、さらに
副産物である悪鬼と業魔の出現。その強大すぎる力ゆえに
雁字搦めになった人間側に、さらにバケネズミも絡んでくる。
このバケネズミがなー。最初出てきた時からヤな予感してたけど
やっぱりそういうオチかーという。あと、スクィーラ。上巻で
出番終了かと思いきや、下巻以降はまさに八面六臂の活躍
(と言っていいのか)。「史上最弱が最も恐ろしい」とは、
彼のための言葉かも。この、人間・バケネズミ・悪鬼が、
じゃんけんのような三すくみに陥る終盤のクライシスは、嫌でも
手に汗握る。で、読み終わった後に気づくのは、早季や覚、瞬
といった主人公側ではなく、奇狼丸やスクィーラらバケネズミ側に
うっかり感情移入していたということ。最後のオチ見れば
そりゃそうなんだけど、奇狼丸の最期ひとつとっても、あの行動を
受け入れる側と提案する側の温度差というか、なんというか。
理解のある主人公でさえ、“ああ”なんだもんなー。大きすぎる力は
見える部分から見えない部分まで、すべて変えてしまうのか。
ただ、守と真理亜の顛末だけは、切なくなるね。詳しくは
書かれてないからこそ、ふたりで過ごした日々が気になる。

とにかく、ボリュームはあるものの、読みやすくハマりやすく
先が気になって止められない感じなので、おすすめです。
長期間読まずに、放っておいた俺が言うことじゃないけど。

■貴志祐介『新世界より』上・下巻 講談社

Comments 0