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kuro score >>> cross core !!!

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『神戸在住』の最終巻がようやく刊行。
足掛け8年の連載を締めくくるにふさわしく
柔らかであたたかい、この作品らしい終わり方。
でも、それだけではなく苦味成分が含まれるのが肝。

物語は、神戸の大学に通う東京生まれの主人公の
ごく普通の日常を、ゆっくり丹念に描いていく。
大学での講義やゼミの様子、友人との語らい、家族や
ご近所さんとの生活。本当に、どこにでもあることばかり。
なのに、なぜか惹きつけられて、読み出したらとまらなくなる。
目立つ内容でも絵柄でもないのに、掲載誌で賞獲って
そのまま連載が始まった時のことを覚えてるくらいだから
“何か”あるんだろう。構成がうまいのかな。
こういう群像劇にありがちなのは、脇役のキャラが濃くなりすぎて
主人公がまったく目立たなくなること。本作も、喋りたおして
ボケまくる周囲に対し、主人公は地味で、目立つのが苦手な性格。
にもかかわらず、ブレることのない存在感を示し続けられるのは、
きちんと人間が描けているから(なんか偉そうな感想で申し訳)。
あと、ただの日常漫画とは異なる深みというか、物語に
大きな幅を与えたのが「震災」と「日和洋次をめぐる一連の話」。
1巻と3巻で描かれた神戸大震災は、登場人物等がフィクション
であるにもかかわらず、これ以上ないくらい地に足着いた
説得力があり、今まで見た震災関連のどんな報道・ルポ
よりもリアルで、心に迫るものがあった。
そして、車イスのイラストレーター・日和洋次との
エピソード。ごく早い段階から伏線を張られてきた
彼の身に起こる現実は、主人公にあまりに大きな影響を
与え、追い詰め、とことんまで突き落とす。
それまで優しさを表現するのに機能していたシンプルで
軽やかな絵柄は一転、寒々しさ・空虚さをまとう。
一人の人間の生々しい絶望を、徹底的に冷たく、鋭利に
容赦なく描写する展開は、読者の安易な感情移入をも拒絶する。
連載で読んでた時は、すぐそばにいる人の目の前がガラスの壁で
遮られたような感覚で、不安でもどかしくて、本気で胃が
きりきりした。でも、そんな風に逃げることも嘘もなく
人の心と真正面から向き合い続けてきたからこそ、到達できた
完成度がこの作品にはあると思う。

こうした積み重ねの上に立つ最終巻。時は過ぎ、主人公も
卒業・就職を迎え、大学時代のいろんなことに自らけじめを
つけていく。白眉は、やっぱり鈴木さんとの真の和解。
てゆーか、タカ美ちゃんはええ子やで。
こうして終わってしまうと、若干寂しさもあるけど
これだけ綺麗にまとめられると、今まで読んでて
よかったなあと、しみじみ。あ、ここまでの感想読んでたら
重くて真面目な漫画だと勘違いされかねないけど、基本
ゆるくて、会話のテンポがよくて、時々悪ノリです。
その悪ノリ部分を煮詰めて昇華させたのが、同作者の
最新作『巨娘』。『神戸在住』で見せた良心はすべて剥ぎ捨て
本能のまま書き殴った問題作は、濃い神戸ファンの後頭部を
フルスイングし、ゆるファンの心をわし掴んだという。
まぜると危険なので、この2作を読む時は、間を置いてください。

■木村紺『神戸在住』10巻 講談社
■木村紺『巨娘』1巻 講談社

神戸在住ファンです。
あまり、インターネットはしない方なのですが、
ふと、思い立って検索していたら辿り着きました。
2004年頃転職して以来、雑誌を読む暇すら無い程、忙しい日々で、
今日まで、神戸在住は連載中だと思っていました。
明日、まとめて最終巻まで買いに行きます(本気)。

2008.11.05 17:05 URL | 25インチ #- [ 編集 ]

ぜひぜひ買ってきてください。
神戸在住らしく、穏やかで柔らかい中にも、リアルな苦味が
混ざったまま、最終エピソードを迎えます。最終巻については
あまり多くは言いませんが、とにかく鈴木さんです。
新作は、ギャグ系に振り切った『巨娘』と、柔道物の『からん』
が出てますが、どちらも極端に作風を変えてきてるので、
しばらく間を置いてから読まれるのを勧めておきます。

2008.11.05 18:22 URL | kuro #RS4k0RpE [ 編集 ]












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