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kuro score >>> cross core !!!

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というわけで、年末年始にかけて読んでたわけですが
なんだろう。ピカレスク・ロマンという言葉は知ってたけど
日本人の書いた小説で、これほどしっくりくるものもないような。
分量的には300ページに満たないものの、無駄な内容・表現は
削ぎ落として、異様に密度を高めているため、読み終わるのに
えらい時間がかかった。
舞台は、第一次世界大戦~ロシア革命&内戦期のウクライナ地方。
しがない小作人から一代で地主に成り上がった父親の次男が
主人公。幼い頃から何一つ不自由のない生活を送り、
周囲の大人たちに守られてぬくぬく生きてきた。けれど
本人はその境遇の価値に気づかず、これといった目的も
持たないまま、地に足もつけず、気ままに日々を過ごす。
その後、革命に乗じた争乱に巻き込まれた際、自分が
無自覚に引き起こした事件の顛末を知るに至り
彼は故郷と過去に訣別して、略奪と殺戮で糧を得る
世界へと足を踏み入れる。

正直、自分でいくらでも人生を選べたのに、何も
選択せず、流れに身を任せて場当たり的にやり過ごす。
そのくせ、プライドは高く、無意識に周りの人間を
見下していた彼は、最初から最期までどうしようもなく
おぼっちゃんだった。常に、自分だけは何とかなると思い
最終的には見下していた人たちのように生きていければいいとか
都合のいいことを夢想しつつも時すでに遅く、それが
叶うことなく幕を閉じる。本当、バカな奴だと心の底から
思えないのは、うっかり自分の人生と重ね合わせて見てしまうから。
しがらみの多い故郷を離れ、家族を作るでもなく
ひとり気ままに送る人生。それこそ、どこにでも根を下ろして
生きればよかったのに、それができないのは最早
生まれつきそうだから、としか答えようがない。

■佐藤亜紀『ミノタウロス』講談社












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