kuro score >>> cross core !!!

荒野の誓い

hostiles.jpg

西部開拓時代の終わり。
インディアンを掃討し、フロンティアが消滅した
アメリカを舞台に描く、ウェスタン・ノワール。

1892年、ニューメキシコ州ベリンジャー峠。
白人が北米を征服したインディアン戦争において
大活躍を果たしたジョー・ブロッカー大尉は
インディアンを収容する刑務所で看守を務めていた。
ある日、余命幾許もないシャイアン族の酋長を
彼らの聖地・モンタナの「熊の峡谷」まで護衛して
送り届けるよう上官から指示される。しかし今さら
人道的な理由で、かつての仇敵を守ることに対し
彼は耐え切れない思いを抱くのだった―。

冒頭から、コマンチ族残党のえげつない行為や
大尉の容赦のない振る舞いを前面に押し出して
描いており、この作品は一体どこへ向かうのか
冷や冷やしながら見てたけど、聖地に向けての旅が
始まると、視線はすっと一点に収束されていく。

腹の底では静かにインディアンを憎み続ける大尉と、
人生の終わりを前にすべてを受け入れるかのような
表情を見せる酋長。彼ら二人の旅に、コマンチ族に
家族を惨殺された女性や、戦争で人を殺し仲間を
失いすぎて心に穴が開いた曹長、戦争後もインディアンを
虐殺し逮捕された軍曹と、様々な人々の思いや葛藤が
重なっていくことで、二人の関係性にも変化が現れ始める。

誰も彼もが罪を背負い、傷を負い、安易な救済など
望むべくもないが、同じ旅を通して魂が触れ合い
気持ちが伝わることで、やがて行動をも変えていく。
旅の終わりの地で、新たな障害にぶつかった時
大尉が見せた、冷静で、情に厚く、公平な一面は
この旅で新たに生まれたものなのか、それとも元々
彼の奥底でずっと秘められていたものなのか。
ここには、人間を信じ、決して諦めないという意思、
そして矜持が詰め込まれていたように思う。

そうした人間模様と同じくらい、本作で重要な位置を
占めていたのが、広大で過酷で美しい大自然の風景。
あの、青く乾いた眩い空間を、馬に乗って一列に連なり
進んでいく光景は、どこか神々しくもあり、ただ
見ているだけで、何かが浄化されていくような感覚を覚えた。
この先ずっと、心に残り続けるシーンとなるだろう。

Comments 0