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kuro score >>> cross core !!!

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30代で無名の美術評論家ゼバスティアン・ツェルナー。
芸術家の伝記で一発当てようと目論み彼が目をつけたのは
マティス最後の弟子にしてピカソの友人であり、かつて
NYでポップアートの寵児として活躍した盲目の画家
マヌエル・カミンスキーその人であった。
このマヌエル・カミンスキーというのは架空の人物
なんだけど、作中では冒頭からあらゆる手段を用いて
まるで本当に存在していたかのように仕立てあげる。
そんな虚虚実実入り混じった作品の中で主役を張るのは
これまた胡散臭さ満載、ペテン師ギリギリの舌先三寸で
つき進んでいくツェルナー。序盤は彼の実際の発言と妄想、
心の声が区別なく表現されるので、一瞬戸惑ってしまう。
でも、その隙にストーリーもキャラクターもどんどん
進んでいって、気づけば術中にはまりこんでいる感覚に。
いろんな意味でタチの悪い作品だった(笑)。

そのストーリーは、新しいネタを引き出そうとする
ツェルナーと、彼を上回るマイペースさ、老獪さで
攪乱してくるカミンスキーとの食えないインタビューから
始まり、若き日のカミンスキーにとって大きな存在であった
運命の女・テレーゼの下へ向かうロードムービーへと変化する。
スイスの山奥からベルギーの海辺へ。ふたりは数々の
トラブル(主にカミンスキーが原因だが)に見舞われつつも
無事テレーゼの下へたどり着くのだが…。彼女との再会で
なにかが劇的に変わったり、カタルシスが得られる訳ではなく
むしろずっと一緒に過ごしたふたりの関係性に、かすかな
変化が現れてくる。お互い口先だけで言い合ってきた中で
最後に見せた、ほんの少しの本音。サングラスで隠していた
目で見ていたのは、相手の人生。あるいは未来か。

旅先の風景の美しさ、要所要所で絵画風に加工されたシーン。
そしてカミンスキーの静かな告白と、ツェルナーのさびしげな
視線がゆっくりと心に積もっていく。そんな作品だった。












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