c r o s s + c o r e

kuro score >>> cross core !!!

comics1703.jpg

今月発行分は、どの作品もちょうどいい感じに
盛り上がりつつあって内容が濃ゆく、読み応えあった。
巻数もまだ少なめなので、1巻から読み直すのも楽しい。

■五十嵐大介『ウムヴェルト』 講談社
2004年~2014年の10年間に描かれた全10編の短編を
収録した五十嵐大介作品集。いずれの作品も、風や光、
匂いまで感じられそうなほど細密かつ濃厚に描かれた
自然描写と超常的な現象、そして色香と清廉さを
あわせ持つ少女が等しく主役を担っている。
10編のうち何作かは、結構最近読んだ記憶があるなと
思ったけど、「鰐」と「マサヨシとバアちゃん」、
「ムーン・チャイルド」の3編は、以前特集を組まれた
文藝別冊』で既に収録済だった。そんな中で一番
印象的なのはやはり表題作であり、『ディザインズ』の
前日譚でもある「ウムヴェルト」。ナラ・プラント計画や
ヒューマナイズド・アニマルの生みの親オクダ、そして
各生物固有の認識世界“環世界(ウムヴェルト)”という
概念はすべてこの作品で出揃っているけれど、何より
主人公であるカエルのHA(ヒューマナイズド・アニマル)の
魅力が炸裂しているのが一番の見どころ。夜の川や街中を
飛び跳ねるように駆け抜けたかと思えば、鬱蒼とした
庭の木陰で無垢な少女のようにちょこんとしゃがみ込み、
武装した軍事会社社員に対しては身ひとつで渡り合う。
言葉は発せない代わりに、その身体で、視線で、佇まいで
彼女は語るのだ。現在はやや他のキャラクターに押され気味な
ディザインズでも、その魅力を存分に発揮する日を待ちたい。

■五十嵐大介『ディザインズ』2巻 講談社
というわけで、そのディザインズ待望の第2巻。
研究所から脱走したヒョウのHA・ベイブ。イルカたちの
追撃を受けた彼女を間一髪で救った相方アンは身代わりに
トドメを刺されてしまう。この“ふたり”が数少ない友だち
だったクーベルチュールは、アンの最期を幻視するのだった―。
HA同士の流麗で生々しい格闘が始まったかと思えば、HAの
生みの親・オクダの得体の知れなさが一気に噴出したり、
突如宇宙ステーションでの実験へ場面が変わったりと
めくるめく展開を見せる本巻。でも、その中にあって
言葉を発せないクーベルチュールがひとり、静かで大きな
存在感を示す。ただ黙々と靴を編み、お菓子を口にする
シーンの美しさ、豊かさはもはや奇跡のよう。ストーリーは
ますます不穏になっていくけど、彼女の存在があるだけで
目を離すことができなくなると確信できる。

■吾峠呼世晴『鬼滅の刃』5巻 集英社
一冊まるごと使って、那田蜘蛛山における蜘蛛鬼家族との
死闘を描く。初っ端から主人公・炭治郎と伊之助の
共闘・離散に始まり、1巻以来久々となる冨岡義勇の登場、
鬼の幹部格である十二鬼月・累との決戦と詰めこみまくりの
一冊。なかでも、炭治郎の妹・禰豆子を起点とした
炭治郎の紡ぐ絆と、累が縛りつける糸の対比は絶妙。
家族の絆とか親の愛なんて、真正面から描いたら普通は
くさくなりそうなものだけど、この作者の表現だとなぜ
こんなに胸に響くんだろう。命懸けで互いを救おうともがく
竈門兄妹はもちろん、最期の最期で思わぬ家族の姿を
見せた累にさえ感情移入してしまう。さらに本巻では
冨岡と並ぶ鬼殺隊の柱・胡蝶しのぶも堂々参戦。たった
一話で圧倒的に狂った存在感と底知れなさを見せた
彼女に、ただただ惚れた。おまけもいちいち充実してるし
これは現状、一番面白い少年漫画と断言していいと思う。

■藤本タツキ『ファイアパンチ』4巻 集英社
水着姿の槍使い眼帯女子とか、ブリーフ一丁の爪が
剣になるマスクマンとか、次から次に訳のわからん
キャラクターが増えていく第4巻。というか、見た目に
無駄な情報が多すぎる(笑)。彼らが増えることで
ストーリーも派手に、バトル増し増しかと思いきや
主人公はなんか悩み始めるし、トガタは相変わらず
適当だと思わせて謎の設定出てくるし、自称氷の魔女も
壮大なこと言っといて結論はトガタと変わらんし
なんなんだこの漫画。巻が進めば進むほど、ますます
方向性が見えんぞ。でもそこがいい。このまま突き進め。

■岩明均『ヒストリエ』10巻 講談社
今回も、前巻から約2年ぶりとなる最新刊。
前半はマケドニアがアテネ&テーベ連合軍と戦った
カイロネイアの戦いが描かれる。普通なら戦闘全体を
概観した上で要所要所の戦いを見せていきそうなところを
本作ではアレクサンドロスただ一人に絞って追いかけ
行動は淡々と、人体破壊は念入りに描く。首がさくさく
飛んでいくところはともかく、首が飛ばされたばかりの
兵の死体から武具を取り外そうとする場面を何ページにも
わたって一つひとつ丁寧に詳細に綿密に描き込む情熱は
一体どこから…(笑)。狂気を通り越してもはやシュールで
ちょっと笑ってしまった。そして後半では、主人公
エウメネスの哀しいまでの女性運のなさに、少し泣いた。

■芦奈野ひとし『コトノバドライブ』4巻 講談社
すーちゃんの少し不思議な物語も、これで最終巻。
あらためて、彼女は子供の頃の“目”を大人になっても
持ち続けてる人なんだなと実感した一冊。ちょっとした
季節の変わり目、昔見た景色、小さくて見過ごされがちな
虫や鳥たちの声。彼女の目を通すと、そうした
取るに足らないと思われそうなものも、とても大事な
一瞬の煌めきになる。心にほんの少しの余裕を持って
一日のうち1分でも空を見たり、風の匂いを感じる瞬間を
作れたら、彼女に近づけるのかなあ。そういう気持ちを
思い出すため、これからもふとした時にページをめくりたい。












管理者にだけ表示

トラックバックURL↓
http://crosscore.blog68.fc2.com/tb.php/1651-19c86ae5