c r o s s + c o r e

kuro score >>> cross core !!!

hajimarinoharu.jpg

工業高校から農業高校に進学校と、様々な高校の
学生たちの悩みや葛藤、そして成長を描く連作短編集。
現在2巻まで出ているが(続刊は未定)、1巻の第1話を
除くとすべて、3.11以降の福島が舞台となっている。
2010年に発表された第1話は、自信がなく所在ない少年と
地に足の着いた酪農家の跡取り息子の交流を描いており
青臭くも将来に光が見えるラストが、まばゆかった。
だが、震災を挟んだ2011年発表の第2話では一転
じりじりとした焦燥と、ひりひりする諦念が眼前に
突きつけられる。あれだけ大人っぽく、たくましく見えた
酪農家の少年からは目の光が奪われ、培ってきたものも
すべて手中から零れ落ち、将来も夢も自信も消えていく。
この第2話を掲載誌で初めて読んだ時は、世界のあまりの
変わりようと、少年の無力さ・無念さの底なし感が
容赦なさすぎて、やるせない気持ちになったけど、同時に
彼のために何かしたいという友人や、冷静に状況を把握し
今必要なことを説いてくれる大人たちが描かれたことで
ぎりぎり救いになってくれたように思う。こうした
ストーリーをベースに、さらに自分の頭で考え、行動しよう
という前向き(というか暴走気味)の少年を主人公に据えて
福島の現実を描いたのが第2巻「チェーンソー・ラプソディー」。

椎茸農家の跡取り息子で、バリバリ理系の主人公は
放射性物質の吸収力が高いキノコの性質を逆手に取り
大学に進学後、放射能除去キノコの開発を行うと
ぶち上げる。もちろん実用化に関して難問山積みで
友人たちからも総ツッコミを受けるが、それでも
高校生のうちにできることを一歩一歩進めていく。
基本、理屈っぽいからTwitterで「放射脳」の方と
激論を交わしたり、結婚や出産に悩む女性に対して
詳細なデータを山のように出して説明するんだけど
こういうのを読むと、やはり根拠のある数値があれば
説得力が増すというか、逆に言えば明確な数字が出ない
憶測話や噂話の類は一切信用できないなと実感する。
そして彼は常に地道な勉強を続け、友人たちにも
「俺らに必要なのは知識と技術だ」と断言。それに
プラスして圧倒的な行動力で、避難区域に手伝い&
調査に向かったり、放射性物質不検出の椎茸園や
原木椎茸農家に直接話を聞きに行く。そこで知った
過酷な現実や、どんよりした絶望を前にしても
心折れずに前進できるのは、若さと知識に加えて
厳しい状況でも静かに、地道に戦う同業・同郷の
先輩たちの姿があったから。1巻とは異なり
2巻の主人公の眼は、はるか未来を見つめていた。

舞台となる村も、登場人物も架空のもので、あくまで
フィクション作品。でも、綿密な取材を元にして
リアルな福島の現状を丁寧に、静謐に、愛情を込めて
描いているため、他の震災に関するルポルタージュに
負けない強度を持った作品となっている。あれから3年。
“今”の想いを知る上でも、自ら考えて行動する
きっかけにするためにも、ぜひ手に取ってほしい一冊。

■端野洋子『はじまりのはる』1・2巻 講談社












管理者にだけ表示

トラックバックURL↓
http://crosscore.blog68.fc2.com/tb.php/1301-260e23b8